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帝王切開~It's better than nothing~

日曜の夕方、大家さんとトンガ料理を食べて、昼寝をしていると、ドアをたたく音で起こされました。
ドアの前には同僚と知らないおじいちゃん。
まさか安息日の日曜に仕事?!珍しいこともあるものです。
大切な牛が死にそうだから助けてくれと、そのまま車に乗せられて往診に行くことになりました。

トンガでお産のトラブルと呼ばれても、ほとんどの場合、子牛の足のひっかかりとか、ちょっと曲がった頭を直して産道にのせてあげれば、あとはトンガ人パワーでひっぱるだけ。短時間で済む仕事だろうと気軽に引き受けました。
到着したのはリアホナ村の観光スポット、二股ヤシの木のふもと。
ヤシの木は通常枝分かれせず、1本の木に1房のヤシの実がなるものなので、トンガ人いわく世界にひとつの珍しい木なんだそうです。このおじいちゃんの父親が約100年前に植えたものだそうで、案の定、ながーい自慢話になりましたw
P1080009.jpg
話がそれましたが、さっそく母牛の産道に手を入れてみると、グジュっという嫌~な触感。これは・・・久しぶりに感じる気腫胎の子牛の感触です。胎子が死んで時間が経ち、子宮内で感染をおこして腐って膨張しているのです。これはもう即決で帝王切開。日が暮れかかっていたけれど、時間が経つほど子宮からの感染で母牛も弱っていきます。

すぐ手術が必要だから道具を取りに戻ろうと言うと、呼びに来た同僚は事務所のカギを持っていないそうです。
西の村からカギを持つミカを呼び出し、待つこと30分。みかんをもいで食べながら話していると、子牛は3日前から死んでいたことが判明。牛は普段目の届かないブッシュ(ヤシの木畑)に放されており、3日前に産気づいているのを確認。畜主はもう出てるものだと思っていたけど、今日見かけたらまだ産んでなかったから私を呼んだそうです。トンガの畜主のレベルってこんなものなんです。活動終盤にきて、もっと畜主指導に力を入れればよかったかなと思うことがあります。

さて職場に戻って、帝王切開に使えそうな道具を集めます。
IMG_1256.jpg
7月の新年度予算が降りるまで激貧の診療所。薬はキシラジンとペニシリンのみ。
道具は犬の去勢に使ってる一式、小さな針、糸はカットガットのみ。
メスの刃すら切らしていたとは知らずに探していたら、ミカが見つけてきた錆びたメスの刃。『It's better than nothing!』ないよりはまし、ね(・。・;

どんな道具でも手術は可能です。ただ時間はかかるしアイディアも重要です。
しかし不十分な麻酔で動く牛、小さな鉗子と針、古くてぶちぶち切れてしまう糸との苦戦で2時間半に及びました。
ギャラリーは同僚2人、畜主家族10人。子供から大人までショーを見るかのように集まってきます。
車のライトで照らしてくれたり、水を運んでくれたり、お祈りをしてくれたりと夜9時までお付き合いしてくれました。カメラを持ってくる余裕がなかったので手術風景をアップできないのが残念です。

子宮をお腹から出して胎児を引っ張り出す時に、母牛が暴れて汚染された胎水が腹腔内に入るというトラブルもありましたが、滅菌生食で洗うこともできません。同僚に腹腔内感染のリスクを伝えると、また『It's better than nothing!』と持ってこさせたバケツの水。その水だって無菌じゃないんだからと迷ったけれど、バケツ水でバシャバシャと腹腔内を洗い、ペニシリンを入れておきました。
母牛は高齢だし、出血も多かったのに補液もできないし、感染コントロールも最悪。。。
手術を無事終えてみんな大喜びだけど、ひとり心配をかかえたまま過ごしました。

そして今朝、母牛の無事を確認してひと安心。いや、こんな嬉しいことはありませんね。
減張縫合のため傷口はキレイにはいかなかったけど、それほど腫れもなく、何より元気に草を食べてる姿に感動しました。
IMG_1257.jpgIMG_1265.jpg
トンガの牛って強い!!
同僚のうち数人は帝王切開はみたことがあるけど、その後生き延びる牛はみたことがない、ミラクルだ!と言ってくれました。
今日もまだ熱はあったものの、抗生剤を続けて、さらなる回復を願うばかりです。
IMG_1281.jpg
最後に畜主のおじいちゃんと記念撮影。最後まで二股ヤシの木の自慢話がとまらないおじいちゃんでしたw

コメント:

自分の技術や努力でひとの役に立てるってホントに嬉しいことだね。
やると決めたらモノがあっても無くても全力でやるしかないもんね。
お疲れ様!母牛さんが元気に回復しますように★
2013/06/04(火) 20:18:31 |URL|ゆかちん #- [編集]
畜主家族10人
多いな~ どんな内訳で10人なんだろ
いろいろしてくれたみたいだけど、さすがにそんなに居たら邪魔じゃない?(^^;)
2013/06/04(火) 22:02:25 |URL|どん兵衛 #- [編集]
>ゆかちん
ありがと☆
元気になった牛を再診に行った時は嬉しくて嬉しくて。
こういう瞬間のために生きてる気がした(笑)
人のため動物のためになれること、獣医を目指した初心を思い出すね。

2013/06/05(水) 05:57:13 |URL|akikokatsuno #- [編集]
>どん兵衛
10人家族はトンガではわりと一般的だよ。
親戚も一緒に住む人が多いからね。
内訳は、実際手伝ってくれた男手が3人、あかちゃん1、子供たち3、あとは女性ってかんじ。
みんな遠目に見てるだけ~って位だから邪魔ではないけどね。
さすがキリスト教国、とりあえず誰からともなくお祈りが始まるんだよね(笑)
2013/06/05(水) 06:02:51 |URL|akikokatsuno #- [編集]

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akikokatsuno

Author:akikokatsuno
2011年9月26日~2013年9月26日まで、青年海外協力隊の獣医隊員としてトンガ王国で活動。トンガで感じたことを日本に伝えるためのブログです。帰国して現在、動物病院をやっています。
ポックル動物病院 http://pokkur-ah.com/

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